なぜあの人は「~してあげる」と言うのか、そして言い続ける人たちへ

AはBに○○してあげる。
話者は、Aがする○○が、Bにとって利益になると想定している。そして、Aの方がBより立場が上と考えている。
AもBもその場にいない誰かならまあいいとして、問題はAが話者でBが聞き手の場合。
私があなたに○○してあげる。
これを言われるのは嫌いだ。

この「~してあげる」は、日常的に言う人と言わないようにしている人がいる。
私は言わない派だ。
自分の見え方や言葉の印象について、少しでも気にしていれば、「私があなたに○○してあげる」などという言葉は出てこないはずだ、と思っている。

以前の記事でも、この「~してあげる」という言葉について、少し触れている。

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「~してあげる」というと、「お肉に塩をよく揉み込んであげて」とか「お肌に化粧水をよく浸透させてあげて」といったモノを対象とした「~してあげる」もイラッとされがちらしい。
けれども今回、こちらは扱わない。
あくまで「子供に玩具を買ってあげる」とか「おばあちゃんに顔を見せに行ってあげる」など、対象が人のやつだ。

「~してあげる」とは何なのか

「あげる」は本来、「箱を棚にあげる」のように、ものを低い場所から高いほうへと動かすという意味をもち、そこから「敬う人に差し出す」という「やる/与える」の謙譲語としての意味をもつようになったという。
けれども近年は謙譲語としての性質が弱まり、「やる/与える」の丁寧語・美化語のような使われ方をしている傾向にある。
これは「やる」という語が、やや下品で粗暴な感じがして使いにくいという理由から来ているようだ。
補助動詞としての「(~して)あげる」と「(~して)やる」も同じ関係にある。

「~してあげる」にイラッとする理由

私の場合、「AがBに○○してやる」と誰かが言うのを聞くと、話者A・Bの関係が何であれ、イラッとするより驚きが先に来る。
その言葉のがさつさ、粗野さが先立っているからだ。
だからまず、怖いな、驚いたな、と思う。
恩着せがましさを感じたとしても、「この人はそういう人だから」と割り切れる。

先述のとおり、「~してあげる」は「~してやる」を少し上品風に言い換えたものだ。
だから「私があなたに○○してあげる」と言われれば、「~してやる」のときほどの驚きはない。
代わりに際立ってくるのは恩着せがましさだ。

「~してあげる(やる)」は、恩恵として行う意味を表している。
つまり「私があなたに○○してあげる」と言うとき、話者は自分の行為が聞き手にとっての利益になると信じて疑っていない。
考え方も置かれている状況も人それぞれなのだから、話者がよいと思っていることでも聞き手は迷惑に感じるかもしれない。それを考慮せず、「私がよいと思っていることは、相手もよいと思っているに決まっている」という傲慢さ・狭量さがその背景にある。
また、「~してあげる(やる)」を目上の相手に使うのが失礼であることからもわかるように、話者は聞き手を下に見ている。
そうして透けて見える恩着せがましさ(そして視野の狭さ)や侮蔑感が、敢えて「~してやる」という言葉を捨て、上品ぶって「~してあげる」を選んでいるのだから、却って鼻につくのだ。

ではどう言い換えればいいのか

自分を主語にする際、「(~して)あげる」などという余計な補助動詞をつけなければいいだけだ。
本動詞としての「あげる」なら、「贈る」とか「渡す」といった代替語がある。

なぜあの人は「~してあげる」と言うのか

私調べなんだけど、「~してあげる」って言う人って中年以上が多い気がする。
20代とかで使ってる人って、あまりいない印象。誰か調べてくれないかな。

以下に、「私があなたに○○してあげる」と言う人の気持ちを想像してみる。

  • 自分の優位を示したい または 優位が決定的で気を遣いたくない
    一種のマウンティングともいえそうだ。
    けれども、憤慨したり失望したりした聞き手に、却って見下されてしまいそうだ。
  • 自分の行為が相手の利益になることを強調したい(そして感謝されたい)
    話者の行為が聞き手の利益になるかどうかは、聞き手が決めることだ。
    そこに考えが至らないのは本当に情けないし、聞き手が話者の意図(善意らしきもの)を汲み取れないと思っているなら、それも聞き手への侮辱にあたる。
  • 単に習慣化しているだけ
    「~してあげる」という言葉がもたらす印象について顧みたことがないだけ。
    突っ込んでみると、たぶん「周りがみんな使ってるからいいでしょ?」「そんなこと気にする方がおかしい」「細かすぎ」「意地悪」と言うだろう。
  • 上記のうち、2または3パターンの複合型
    たぶんこれが一番多いと思う。

それでも「~してあげる」と言い続ける人へ

あなたたちは、私のように考える人を「気にしすぎ」と言うだろう。
でも、こちら側からすれば、あなたたちは「自分の言葉が相手にどんな印象を与えるかを顧みたことがない、いろいろ足りない人」だ。正直、いけないと思いつつも、こちらのほうがあなたたちを見下してしまいそうだ。
でもこちらは「気にするタイプ」だから、それが態度に出ないよう気をつけてしまうだろう。
見放されるのが嫌なら、自分で気づいて自分で直すしかない。

参考

日本語マナーの歳時記 第33回 「~してあげる」はだれからだれへ? – Web日本語

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