体毛の業ー30代の私は脱毛で10代の私を慰める

脱毛に通っている。
以前はサロン脱毛には通っていたが、望む効果は得られなかったので、この夏から医療脱毛にシフトした。
脱毛箇所は、腕と脚、顔、そしてVIOである。

VIOとは、腿の付け根やアンダーヘアの生えているあたりから肛門周りまでの一帯を指す。
よくわからない、気になるという方は、おのおの検索して調べてもらいたい。

VIO脱毛の目標は人それぞれで、形を整える、毛の量を減らす、毛質を柔らかくする、全部なくすなどが挙げられる。
すべてひっくるめて言うと、VIO脱毛とは「陰毛の調節」だ。

脱毛の料金はここ数年で格段に安くなっているし、いい加減剃っても剃っても生えてくるのにうんざりしていたところだ。
特にVIOは、手入れするだけで首や肩が凝る。怠ると痒くなる(人によるが)。
毛に付着した排泄物を取り除くのも面倒臭い。
だから私は腕や脚、顔といった「外から見える」箇所だけでなく、VIOという「外から見えない」箇所の脱毛に踏み切ったのだ。

医療脱毛を始めて日は浅いが、経過は順調だ。
1回で毛はぼろぼろ抜けたし、生えてくる毛の成長もめちゃめちゃ遅い。
つまり、腕・脚・顔とともに、私のVIOはとても快適であり、今後は快適さを増してゴキゲンになることが予想されるというわけだ。
(脱毛の機械はクリニックによって異なり、体質によって合う合わないがあります。私自身も今後、回数と時間を経てどうなるかわかりません)

20代の私と彼女の毛

学生時代のサークルに、とても可愛らしく性格もよく、しかも行動や言葉の端々から育ちのよさを滲ませている後輩がいた。
私はこういう人とコミュニケーションを取るのが苦手だ。
私みたいな下賎の輩が話しかけることで、不愉快にさせはしまいか汚しはしまいかと、勝手に困ってしまうのだ。
私が属していたサークルは、活動に着替えを必要とするものだった。
女子更衣室で、ボトムを脱いでいた彼女を見て、私はぎょっとした。
白だったかパステルピンクだったかレモンイエローだったかまでは覚えていないが、たぶん普通に可愛いパンツの前が、もこもこといびつに盛り上がっていた。
自然そのまま、野放図に伸ばされた毛だった。
勢いがありすぎて針みたいになっているやつが、パンツの生地を突き抜けて外に出てすらいた。
そこだけ別の生き物みたいだった。
不格好を通り越してグロテスク――いや、それすらも飛び越えて、なんかもう面白い。
ぎょっとしたそのあと湧き上がってきたのは、「彼女にも美しくない部分はある」という安堵感だった。
(ちなみに当時の私は、はさみで切って量を調節していた)

10代の私と私たちの毛

さて、さらに古い時代を思い出してみる。
私(30代前半)くらいの年代でいえば、中学生頃に体毛の処理を始めた人が多いと推測する。
私自身も、中学生の頃に家にあったシェーバーを使って腕や脚の毛を処理し始めた。
腕や脚はおそらく人並みだったと思うが、顔の毛は濃く、放っておくと眉毛がつながってしまう。
それを小学生の頃、アホの男子に執拗にいじられたこともあるし、眉毛のつながった自分の顔はどう見ても滑稽だった。
だから理容院で顔のシェービングをしてもらい、その直後の状態をキープするため、毎日手鏡を限界まで顔に近づけては、毛抜きで抜きまくった。
腕や脚であれ顔であれ、この無数の黒くてもさもさしたのが生えていると、醜い。だから排除する。
あったのは、その気持ちだけだ。

毛で傷つき、毛で慰める

そういう私を見て、真っ先に、そして一番強く反応したのは母だった。必死に毛の処理をする私を見て、「剃ると太くなるよ」「抜くと増えるよ」など不確かな情報を吹き込む。明らかに不機嫌になる。嫌味を言う。揶揄する。
娘が「色気づく」のが嫌、垢抜けていくのが嫌、自分よりダサくてコントローラブルなまま置いておきたい――という感情を言われずともビシバシとぶつけられて、非常に気色悪かった。

特に眉毛へのコンプレックスは拗れに拗れていたため、眉毛は一時、極端に少なくなってしまった。
それを私のことを気に入らない担任が評価を下げる取っかかりにした。機嫌を悪くしていた別の教師のターゲットにされたこともあった。同級生にもちくちくいじられた。

私はといえば、そうした憂さを晴らすように、同級生女子の腕や脚を観察しまくった。
まだ体毛の処理を始めていない子を見つけては心中「だせぇ」と見下し、処理をしている子でも剃り残しがあれば、「まだまだねウフフ」と思った。

体毛はかくも罪深い

人間の体毛の多くは、皮膚を怪我から守ってくれるわけでも、有害な菌を退治してくれるわけでもない。
そのくせ、手間を生み、コンプレックスを生み、周りの人の心までもざわつかせる。
学生時代の例だって、私は後輩の毛を見て安心したけれど、後輩にとっては低く見られてしまったということだ。
体毛とは実に罪深い。

毛で過去を許し、毛で未来を慈しむ

繰り返すが、私がVIO脱毛をする目的は、「快適さ」だ。
けれどもVIO脱毛には、黒ずみを軽減するとか、手触りをよくするなどというメリットもある。
外から見えない部分を美しくするのは、「美意識が高い」と言われることだ。
私は無意識にそれをも求めていて、「快適で美意識も高い私」を目指すことで、過去体毛に苦しめられていた私を「あんたは悪くない」と慰めようとしているのかもしれない。そして、これからの自尊感情も高めようとしているのかもしれない。

せっかくなので自分用ライフハック

他人の陰毛事情は、確かめるのが難しいことだ。
だから、次にどうしても敵わない相手や、嫌な相手に出会ったら、
「でもあんたボーボーじゃん」
と勝手に思ってみようかな、と考えている。
そうしたら、少しだけ気が楽になるかもしれない。
もし確かめる機会があって、その人のVIOが美しかったら、潔く降参できそうだ。

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